高い放射線量、復旧阻(ふっきゅうはば)む 4号機 米軍にヘリ散水要請(ようせい)へ 2011年3月16日3時2分 東日本大震災で被害を受けた東京電力福島第一原発(福島県大熊(おおくま)町、双葉(ふたば)町)は15日、放射線量が異常に高くなり、復旧(ふっきゅう)作業がきわめて困難な状況に なっている。爆発事故が起きた4号機では人間が構内(こうない)に入れず、東電はヘリコプターによる上空からの散水を米軍に要請(ようせい)する。2号機も爆発が起きて圧力抑制室(あつりょくよくせいしつ) が破損(はそん)。高濃度の放射性物質(ぶっしつ)が外部に漏(も)れ、菅(かん)直人(なおと)首相(しゅしょう)は半径(はんけい)20キロから30キロの住民に屋内(おくない)退避(たいひ)を指示した。  東京電力福島事務所によると、15日に爆発した4号機で、東電の作業員が調べたところ、4号機の原子炉(げんしろ)建屋(たてや)の北西側壁面(へきめん)に8メートル四方の穴が2カ所開いていた。  建屋(たてや)に入り、4階で放射線を測ったら、1時間あたり最大400ミリシーベルトという高い値(ね)が観測(かんそく)された。500ミリシーベルトを浴びると、血液中(けつえきちゅう)のリンパ球(き ゅう)の減少などが起きる。  5階には使用済(ず)み核燃料(かくねんりょう)を貯蔵(ちょぞう)したプールがあるが、線量が高すぎて先に進めず、プールの損傷(そんしょう)状態は確認できていない。  昼の時点で建屋に開いた穴から、プールに水が満たされているのは確認したが、その後は使用済(ず)み核燃料(かくねんりょう)がどうなったか確認できていないという。午前9時 38分ごろには、原子炉建屋(げんしろたてや)4階北西部付近(ふきん)で出火も確認。自然鎮火(ちんか)したが、使用済(ず)み核燃料(かくねんりょう)が損傷(そんしょう)していれば、建屋(たてや)以外に 遮(さえぎ)るものがなく、放射性物質が外部 に漏れ出すおそれがある。  4号機は、構内だけでなく、周辺でも毎時100ミリシーベルトの放射線量が観測(かんそく)されており、緊急時(きんきゅうじ)の作業員でも1時間しかその場にいられない値(ね)で作業ができない状態だ。  ヘリコプターで上空から散水する方法があり、自衛隊(じえいたい)が検討しているが、慎重論(しんちょうろん)もある。東電は15日の会見で、「米軍に応援(おうえん)要請(ようせい)を打診(だしん)する」 と明らかにした。了解が得られれば16日中にも実施(じっし)してもらう。 logo.gif 使用済(しようず)み核燃料(かくねんりょう)は熱を持っており、通常はプールに水を循環(じゅんかん)させて冷やしている。だが、定期検査で停止中だった4号機も、1~3号機同様、地震で外部 からの送電、非常用発電機が止まって電源を失い、十分に熱を冷やせていない。水の注入(ちゅうにゅう)はできている5、6号機でも、海水による熱交換器の電源がないため温 度が少しずつ上昇(じょうしょう)している。  1~3号機では、海水を注入(ちゅうにゅう)して原子炉内を冷やす作業が続いている。核燃料(かくねんりょう)が冷却水(れいきゃくすい)から露出(ろしゅつ)した可能性があるが、圧力は安定しており、格納容 器(かくのうようき)が損傷(そんしょう)しているおそれは低いという。730人の作業員が順番に現場に行き、70人で注入している。  15日早朝(そうちょう)には、政府と東電が一体で危機対応にあたる「福島原子力発電所事故対策統合本部」(本部長=菅(かん)首相(しゅしょう))を東京・内幸町(うちさいわいちょう)の東電本店に設置。海 江田万里(かいえだばんり)経済産業相(しょう)と清水正孝(しみずまさたか)東電社長を副本部長とし、海江田(かいえだ)氏をほぼ常駐(じょうちゅう)させる。  菅(かん)首相(しゅしょう)は同日午前11時過ぎからの記者会見で、福島第一原発4号機で火災が発生したことを明らかにし、「今後さらなる放射性物質の漏洩(ろうえい)の危険が高まっている」と説明。同原発 から20キロ圏外(けんがい)への避難(ひなん)の徹底(てってい)などを指示した。  国土交通省(こくどこうつうしょう)は15日、福島第一原発の半径(はんけい)30キロの上空を、高度にかかわらず飛行禁止にした。海上保安庁も巡視船(じゅんしせん)を派遣(はけん)し、洋上で避難(ひなん )指示が出ている半径(はんけい)20キロ以内に船が入らないよう警戒(けいかい)している。  仏原子力安全委員会のラコスト委員長は15日、福島原発事故が国際原子力事象(じしょう)評価尺度(しゃくど)で、チェルノブイリ原発事故(レベル7)に次ぐ「レベル6」に相当する大事故との認識を明らかにし た。AFP通信が報じた。 logo.gif